【小説】崩れる脳を抱きしめて(知念実希人)

【小説】崩れる脳を抱きしめて(知念実希人)

「崩れる脳を抱きしめて」を手に取った理由

 明確に、これ!という理由は今回はないです…
 ツイッターで読書好きの方のツイートの中に「知念実希人さん」という名前をよく見かけたので調べてみて、「崩れる脳を抱きしめて」の存在を知り、医師が書いた「恋愛×ミステリー」小説に漠然と興味を持って読んでみた!というかんじです。

あらすじ

 広島の病院で働く研修医の碓氷は、神奈川の海の近くの小さな病院で1ヶ月間働くことになる。

 そこで出会った312号室のユカリ。彼女は脳腫瘍を患っており、外の世界に怯えながら病院に閉じこもって日々を過ごしていた。碓氷は、自分と同じように大きな苦悩を抱えながら、明るくもあり、強くもあり、様々な表情を見せるユカリに惹かれていくが、あっという間に1ヶ月が過ぎ、広島に戻ることになります。

 広島に戻って少し経ち、碓氷のもとに弁護士の男が訪ねてくる。そしてその男から告げられたのは、碓氷ユカリの遺産が入るという話。

 碓氷が神奈川を離れた後、ユカリに何があったのか…この話を聞いた碓氷はどうするのか…

感想

「優しい小説」だと思いました。

 初めは恋愛小説として物語の中に引き込まれていき、だんだんとミステリー小説になっていき、読者も主人公の目線で謎に立ち向かっていきます。でも読み終わった後の感覚としては温かく、穏やかな気持ちになりました。

 いろいろな面白さが詰め込まれていて、ミステリーとして予想を裏切り、ハッとさせられる部分もあれば、「登場人物にこうなってほしい!」と願う読者の気持ちに寄り添ってくれる部分もあり、恋愛小説の切なさや温かさもあります。

 ミステリーの部分について、もちろん「そういうことだったのか!」という驚きはありますが、何度も読まないと理解できないような複雑なものではなく、誰が読んでも楽しめる内容になっています。

 また「崩れる脳を抱きしめて」を通じて、知念実希人さんが伝えたかったこともわかりやすく、伝わってきます。

 こういった配慮やちょっとした工夫(筆者が意図したかはわかりませんが、僕が勝手に感じとりました(笑))全部含めて、かなり好きな本になりました。
これまで読んだ中だと「ザリガニの鳴くところ」と並んで一番のお気に入りかな。

 めちゃくちゃ複雑な作り込まれたミステリーというわけではないし、とてつもないインパクトがあるわけでもないですが、自信をもって誰にでもおすすめできる小説です!

 それにしても小説家の方はどういう考え方をすれば、こういう話が書けるんだろうかと不思議に思ったのと同時に改めてすごいなと思った。清々しく楽しいミステリーを作る人が同時にユカリさんのようななんとなく惹かれる人を描いているのが不思議で仕方ない。人間的に不思議と惹かれるユカリさんは、ミステリーを考えるのとは全く別の考え方で考えられているんだろうか?それともミステリーと同じように読者がどういう人を魅力的にかんじ、物語に引き込まれていくか全て計算して描かれているだろうか?というのがすごく気になった。

「崩れる脳を抱きしめて」を読んで得たこと・学んだこと

「自分たちがなぜこの世に生まれ、なぜここにいるのか」

 こういうと大げさに聞こえて難しいかもしれないけど、答えが見つかれば嬉しいし、見つからなければそれはそれでいい。なんとなく、頭の片隅に置きながら一日一日を自分なりに大切にいきたいと思いました。