【小説】ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野圭吾)

【小説】ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野圭吾)

この本を手に取ったきっかけ

 買い貯めていた本を一通り読み終えて、次に何を読もうかと思い、「Twitterでオススメの本を教えてください」と投稿した際に、オススメの本としてコメントいただいたのがこの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」でした。

 本の内容自体も気になったけど、それよりも見ず知らずの本好きの方がオススメと紹介してくださったのが嬉しくてすぐに購入して読みました。


あらすじ

 悪事を働いた若い3人の青年、彼らが深夜に逃げ込んだのはかつて一人のおじいさんが悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの雑貨店には、深夜にも関わらず郵便口から悩み相談の手紙が落ちてくる。訳も分からないまま、戸惑いながら手紙の返事を書いていく3人。手紙を返すうちに段々と雑貨店の秘密が明らかになり、雑貨店に関わる多くの人の人生が絡み合っていく。田舎の小さな雑貨店が引き起こす奇蹟の話です。


感想

個人的にはこの小説の魅力は大きくふたつかなと思いました。
・ほっこりする話
・何人かの登場人物に関する魅力的な話が「ナミヤ雑貨店」を中心に段々と繋がっていく構成

 単純にまずは家族や恋人との絆、お世話になった人への感謝の気持ちといったものが多くの場面で描かれており、暖かな気持ちになります。
 登場人物はそれぞれ誰かのことを思っていて、その誰かもまた別の誰かを思っていて。自分もお世話になっている人への感謝の気持ちを伝えたくなる話でした。

 特にビートルズ好きの少年の話は個人的に印象に残っています。非常に困難な状況にいる家族の話で、この少年もナミヤ雑貨店に相談の手紙を出します。

すべての問題が解決するまで、時間を要するかもしれません。多くの苦難を経験することになるかもしれません。しかし、だからこそ、家族が一緒にいる必要があると思います。あなたの前では何もおっしゃらないかもしれませんが、お父さんは、かなりのことを覚悟しておられるはずです。それはほかでもありません、家族を守るためです。
(中略)
家族が同じ船に乗ってさえすれば、一緒に正しい道に戻ることも可能です。
                         P235

 その少年からの相談に対する返事の一部です。
 ぼくもすごく家族を大事に思っており、特に両親には感謝してもしきれないのですが、改めて家族は大事だなと思いました。家族というのは不思議なものですよね。3日間休みがあったとして、友達と両親、どっちと旅行に行きたいかと言われるとたぶん友人と行くほうが楽しいし、頻繁に会いたくなるわけでもない。でも自分自身よりも大切な存在で、自分には両親や奥さんがいると思うだけで頑張れたり。家族だけがそういう存在というわけでもないんだと思うんですが、すべての人にぼくにとっての両親や奥さんのような存在がいるといいなと思ったし、自分も誰かにとってのそのような存在になれたらと思いました。

どうか信じていてください。今がどんなにやるせなくても、明日は今日より素晴らしいのだ、と。     ナミヤ雑貨店
                         P236

 上の手紙はこのような一文で締めくくられます。

 このような何人かの人間の人生がナミヤ雑貨店への相談を通して描かれます。それぞれの話が短編集ではなく、本を読み進めるにしたがって繋がっていくところがまた楽しいです。

 コロナで帰省できなかったり、友人や家族にも会えなかったり、ストレスが溜まる状況ですが、この本を読んで遠くから大切は人のことを考えてみるのもアリだと思います!

 映画化されているのでそっちも観てみたいなと思いました。