【小説】ノースライト(横山秀夫)

【小説】ノースライト(横山秀夫)

この本を手に取ったきっかけ

この本もいつも通り帯の文章を見て惹かれて購入しました。
「横山ミステリー史上 最も美しい謎 熱く込み上げる感動」
何年か前に映画になった「64」は映画館で観て、個人的にはすごくおもしろくて、その原作者の横山秀夫さんのミステリー史上最も美しい謎と言われると非常に惹かれました。


あらすじ(ネタバレなし)

 一級建築士の青瀬が設計した新築の家「Y邸」。青瀬が施主に望まれ、全身全霊で設計し、完成させた家。施主も非常に喜び、周囲からも評価され、『平成すまい200選』にも選ばれた青瀬の傑作だが、完成後、青瀬が現地に様子を見に行くとそこに施主一家の姿はなく、電話機以外には家具もない。ただ一つ、「タウトの椅子」を除けば…。Y邸では一体何が起きたのか、一家はどこへ消えたのか。青瀬はタウトの椅子を手掛かりに一家の行方を追っていく。
 タウトの椅子というのはドイツ生まれの建築家ブルーノ・タウトがデザインした椅子です。消えた施主一家の謎を解きながら、青瀬と周囲の人々との関係が描かれていきます。

感想

 序盤から中盤にかけて、すごく引き込まれてどんどん読み進めましたが、終盤少し尻すぼみ感というか、正直なところ少し物足りなさを感じました。「横山ミステリー史上 最も美しい謎 熱く込み上げる感動」でハードルが上がりすぎたのかなとも思います。面白いのは面白いですが、もっと面白いかと思ってたという感じでした。
 個人的にはミステリーとして読むよりも一般的な現代小説として読む方が楽しめるように思いました。

 この本の紹介とは少しずれてしまいますが、「ノースライト」では全体を通して、建築を絡めてストーリーが進んでいき、建物のディテールや建築家ブルーノ・タウトについても多く書かれているため、横山さんは建築学科出身だったりするのかなと思ってウィキペディアで調べてみました。結果として建築に携わっていたような記載は見つけられず、改めてひとつの小説を書くためには多大なる労力がかかっているんだなと思いました。百田尚樹さんが囲碁について書いた「幻庵」を読んだ時も思いましたが、ひとつの小説を書くまでにはストーリーを考えるだけでなく、それに肉付けしていくためにかなり下調べというか情報収拾をされていて、その努力の結晶を数時間で楽しみながら取り込める読書というのはいいものだなと思いました。