【ビジネス書】「家族の幸せ」の経済学(山口 慎太郎)
2019年度にサントリー学芸賞を受賞した本。
「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実
巷で言われる結婚、出産、育児に関するさまざまな「助言」。
「3歳までは母親が育てるべき」
「結婚するなら学歴が近い人が良い」
嘘か本当かわからないその指導や助言に、不安を覚えたり罪悪感を感じる人も多いのではないでしょうか。本書では、そんな巷に溢れるさまざまな助言が “科学的根拠に基づいているのか”を世界中の論文や実証実験の結果から一つ一つ紐解いていきます。
本書の中から事例を一つご紹介します。
「母乳育児」はメリットばかりなのか?
ここでは、ベラルーシで行われた実証をもとに説明がされています。日本などで母乳育児と粉ミルク育児を単純に比較しただけでは、そもそもの家庭環境による差異が影響してしまう恐れがあります。ベラルーシで実施された実証では、抽選で無作為に抽出された母親に、母乳育児促進のための研修を行い、その他の条件は統一しています。そして、出生時からの子どもの健康状態、発達状態をその後16年に渡り追跡調査しています。
実証結果は以下の通り
◆ 母乳育児で生後1年間の胃腸炎と湿疹が減少。
◆ 肥満・アレルギー・喘息防止効果は確認できず。
◆ 知能・行動面に対する長期的な効果も確認できず。
文中では、それぞれの項目が数値的根拠を以って説明されています。
この情報を知ることで、「1年間の健康リスクが小さくなるなら、やっぱり母乳育児にしよう」と思う方もいるでしょうし、「将来的な影響がないなら粉ミルクを使おう」と思う方もいるでしょう。「神話」と「真実」を知ることで、自信を持って選択ができるようになると思います。
科学的な根拠に基づいて説明している本なので、中には仮説を立てたものの、実験をしても有意義な結果は出てこなかったり、結局どっちなんだ?というようなものもありました。でもそれは、数値的根拠にこだわって事実以外は書かないという徹底した姿勢があるからこそだと思います。
正しい情報を得ることで、これから自身が選択を迫られた時に納得できる決断ができると思います。人から助言された時にも揺らがない心を持てるし、他の人に根拠のない助言をして悩ませてしまうことも防げるでしょう。
「男性の育休は子供にどう影響するか」などの内容もあり、女性だけでなく男性にも読んでいただきたい一冊です。ぜひ、本書を読んで結婚・出産・子育ての真実を学んでみてください。
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